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ステーキ女と納豆女、あわよくば。

ありがたいことに自分の活動以外にもピアノサポートのお話があったり、

レコーディングに参加したりとなかなか貴重で面白い経験をさせて頂いている。

環境がごく当たり前に変化する中、最近強烈にインパクトに残った場面を本日は記すことにしよう。

そう、あれはレコーディングの最中、鶴の恩返しのように羽を抜き、一枚一枚反物を織り

神経をすり減らしていると少々集中力が途切れてくる。

レコーディングルームを離れ、深い息を吸い吐き繰り返していると

左耳には大学生グループの賑やかな声が聞こえてくる。

あぁそうか、そろそろ学園祭ライブのシーズンになってきたのかー、練習でもしているのかなぁ

…ふんふん。

ひとり心の中で相槌を打っていると、突如自己顕示欲の強そうな甲高い声が耳の中に手を挙げ横断してきた。

「私みたいな良い女がおるのにさぁぁぁ!」

わたしは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。

失礼ながらも盗み聞きをしていると概要はこうである。

彼女には恋人がいるのだがその恋人が彼女に内緒で、ある特定の女性の家へ遊びに行ったりご飯を食べたりしている、と。

自身の見解としては

おお!!!○○選手ーー!!空振り三振バッターアウトーーー!ゲームセットーーーーー!!

という情感になり、ヘラヘラ苦笑いをしていたが彼女はとどめの一言をさらにこう付け加えた。

「まぁ?私って食べ物に例えたらステーキのようなもんやん?たまには納豆みたいなしょうもないもんもつまみたい衝動になるんちゃん?」

当初は賑やかだった学生グループも次第に空気が凍りつき、呆れてものも言えないような表情をしている。

そのような空気を全く把握することもなく、マシンガンの如く喋り倒す彼女inスタジオ。

わたしはその一連の流れを傍観し彼女の言動もとよりもし、自分が食べ物だったなら何かなぁということが気になって気になって通称お花畑(妄想)に足を踏み入れることとなる。

ううむ、季節に因んだ野菜が一番好きやけど固有名詞の要素が全然思い浮かばんなぁ。

あ、それともたくわんとかかなー。ぽりぽりして美味しいし。

もう彼女達の会話の続きなどどうでもよくなり

【食べ物に例えたら】の枠からどんどんズレていき好きな食べ物のお花畑が広がり

レコーディングルームに入ってもなお、執拗に何やろ?何やろ?と考えていた。

「じゃー雪絵さん、ここからですね、お願いしまーす!」

というエンジニアの言葉ではっと我に返りあーいかんいかんと音楽人モードに戻そうと決意をした瞬間、

ん?ちょっと待てよ。ステーキってそもそも毎日食べたら飽きるやろ。納豆で問題ないやん、寧ろ毎日健康やん。

そこからの何時間、ステーキはないやろという悪魔の囁きが頭をお腹いっぱいにしたので

無論真面目に取り組んだ仕事だったが、出来上がりの音に多少肉の残り香がうつっているかもしれない。

最後に。

頭のいい人は自分のことを頭がいいなどと思わないのと同様

あのときいた彼女は決していい女ではなかっただろうし

いつ、自分の会話の内容を他人が盗み聞きしているかもしれないと思うと

言葉は本当に大事に発しないといけないなと反面教師になったし

あわよくば、音楽的にも女性的にも味噌汁女みたいな存在でいたいなという結論に達したのであった。


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